万葉歌「よ」 良いものは継続させてゆく

よ 淑き人の 良しとよく見て 良しといいし   

   吉野良く見よ 良き人よく見

(巻一・二七 天武天皇)

 「昔のよい人が よいところだとよく見て よいと言った この吉野をよく見なさい今のよい人よ、よく見なさい」

天武天皇が吉野への行幸の折に、皇后や皇子たちに向けて歌われたそうです。

繰り返される口調にこれからを託す気持ちが強く込められているのがわかります。

「よき」「よし」「よく」と八回も出てくるのが特徴的です。

万葉仮名の原文は

人乃 見而 常言師 見与 来三」

となっており、同じ音でもこうして使い分けられています。

「よい」ことはいいことで、ずっと続いてほしいものであり、おめでたいことでもありますね。

「よ」のつく言葉

訓読みで「よ」のつく音をあげて、共通した意味がないか見ていきましょう。

・代  

代わる・代理ですることを意味する。

代を重ねることを「代々」、またそれぞれの代を「歴代」という。

・世  

 世代 世襲 人の一代 などを表す。   (「代」と共通しています)

日本では「君が代」にも歌われるように長く長く続いてゆくこと、永続性、永遠性が尊いこととなります。

天皇家は125代と最も古い家系であり、それをずっと継続されてきたことからもわかります。

また、古くからのお店は代々扱う商品や信用を長年大切に受け継ぎ、守ってきたことの証として老舗(しにせ)と呼ばれます。

「あそこの品物だから間違いない」という店の価値(ブランド)があるからさらに長く続き、長く続いているからこそ、また価値が証明されるということになっていきます。

私たちには、良いものは引き継いでゆくもの、後の世にも残してゆくもの、というようなバトンの受け渡しの感覚が備わっています。

先祖供養を重んじるのも、こうして今に受け継がれたものを振り返り、感謝する想いを忘れないためだということがわかります。

・四   

4の数字はひ、ふ、み、よ と数えるので「良い」につながる数字です。

建物も、家具なども四角いことで安定感があります。

東西南北、春夏秋冬、喜怒哀楽、花鳥風月、起承転結 など

四文字熟語でも、四つで一組を表していたり、収まりの良いことを表現するものも多いですね。

自分や周りにも世の中にも、揺るがない安定感で保たれることに憧れ

穏やかで、平和であることの幸せが続くことを祈らずにはいられない。

いつの時代にも変わらない願いですね

万葉集最後の歌

万葉集最後の歌

そんな「よい」ことを願って詠まれています。

新(あらた)しき 年の初(はじめ)の初春の 

今日降る雪の いや重(し)け吉事(よごと)

(巻二〇・四五一六 大伴家持)

「新しい年の初めの、新春の今日を 降りしきる雪のように、いっそう重なれ、吉き事よ」