万葉歌 春柳 万葉仮名について

2019年4月9日

10年ほど前から書道のお稽古に通い始めたことで、万葉集に親しむきっかけができました。

一向に書道は上達しないのですが、先生にお手本を書いていただくので、好きな歌が増えますます万葉歌に魅かれています。

春柳 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしそ思ふ

(巻十一 二四五三 柿本人麻呂歌集)

「春の楊(やなぎ)を蘰(かずら)にする葛城山に湧き立つ雲のように、立っても座っても妻をこそ思うよ。」

春柳は輪に編んで頭に被って蘰にするところから、葛城山(かつらぎやま)の枕詞となっています。

その次の、立つ雲と立ちても居てもの「立つ」という言葉がつながっています。

また、立つ雲がむくむくと湧き上がる様子も、柔らかな緑の柳がいっせいに芽吹いている様子も、恋心が溢れるように膨らんでゆく気持ちに重なりますね。

万葉歌は本来万葉仮名で書かれていますので、それで見てみると

春楊  葛山  発雲  立座  妹念

の10文字で出来ていて、万葉集の中で一番短い字数のものとしても有名です。

10文字で表された歌は他にもう一首

白玉を 手に捲(ま)きしより 忘れじと 思ほゆらくに なにか終わらむ(二四四七)

白玉 従手纏 不忘 念 何畢

がありますが、こちらは読み下すにはまるで謎解きのようで難しいですね。

ここでなぜ万葉仮名で書かれているのか、ということを調べてみました。

万葉仮名

主として上代(飛鳥・奈良時代)に日本語を表記するために漢字の音を借用して用いられた文字のことである。万葉集でも表記に代表されるため、この名前があります。

漢字の一字一字を、その字そのものの意味にかかわらずに日本語の一音節の表記のために用いるというのが万葉仮名の最大の特徴です。

つまり、漢字の持つ意味は関係なく、その音そのものの発音を書き表すために用いられました。

日本語にカタカナやひらがなが成立する以前には、この万葉仮名が日本語固有の音韻を書き表す唯一の手段であり、その後平安時代には万葉仮名から平仮名、片仮名へと変化していきました。

ひらかな・・・万葉仮名の草書体から変化し独立していった

カタカナ・・・万葉仮名の一部または全部から、音を表す訓点、記号として生まれた

和歌を詠む時など私的なことや、女性に限って用いるものとされていた平仮名が「女手」とされたのに対し、公的文章に用いる仮名として、万葉仮名を「男仮名」と呼ばれ長く用いられたということです。

漢字から仮名が生まれてゆく過程やその時代、想像するだけでもエネルギーやロマンに溢れていますね。

2006年、大阪市中央区の難波宮跡で652年以前の木簡が発掘されました。「皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)」と和歌の冒頭と見られる11文字が記されていました。万葉仮名は7世紀頃には成立したとされています。