世界一堅い食品「鰹節」と麹カビ

だしの王様、かつおぶしは見るからに不思議ですね。単にカツオを気長に乾燥させてあそこまで堅い塊になるものなのか?と疑問がわきます。

鰹節の原型は平安時代の法典である「延喜式」に鰹魚(かたうお)という素干しの保存食として記されているようですが、今のようなくん製として考案されたのは1672年なのだそうです。

その精密な製法を調べてみて驚きました。

鰹の製法

・原料鰹を3枚におろし、そのおろし身を煮籠に入れて、1時間半ほど煮たあと冷やし、骨ぬきをする。

・それを底を簀子(すのこ)張りした木の箱に4、5枚を重ねて入れ、焙煎室で、堅い薪材(まきざい)を燃やしていぶし、乾燥する。

・これは焙乾という方法で、85度Cで約1時間、5日間いぶす。この後火を弱めて、さらに数回繰り返す。最後に3、4日間日光で乾燥すると荒節ができる。

・荒節を舟形に整形削りをし4、5日間日光に乾かしてから、カビ付け用の樽や箱に入れて密閉する。

・この中には、麹カビの一種、アスペルギルス・グラウカスの胞子が多数生息しているから、その中に入れておくと、その表面にはカビが密生する。(一番カビ)

・これを取り出して白乾し、カビをはけでこすりとり、再びカビ付け容器に詰める。

・2週間ほどして、またカビが密生する(二番カビ)から、前と同様の操作をくり返すことで、三番カビ、四番カビを付け、最後に十分に乾燥して出来上がる。

単に乾燥しただけでは内部まで硬くはならない。

また、焙乾しただけでは、乾燥にムラが出て削っているうちに表面からボロボロと崩れてしまう。

そこで、カビを付けることにより、節の表面に生息しようとして、その繁殖にかなりの量の水分を必要とする。

節の内部から表面に吸い上げることで、節は内部から理想的な形で水分が除かれ、硬く乾燥することになる。

そのうえ、カビが生成した脂肪分解酵素は節の脂肪を分解して、脂肪の酸化による品質の劣化を防ぐ。

また、節のたんぱく質を分解して、うま味のもととなるアミノ酸と、同時にイノシン酸を作り、相乗し合って鰹節特有のうま味を生み出す。

(小泉武夫「食と日本人の知恵」より)

湿度の多い環境を好むカビを、湿度の多い日本に生きてきた日本人が、巧みに利用し、智恵の結晶としての食品を生み育ててきました。

乾燥気候の西欧にはカビ食文化はなく、例外としてカマンベルチーズがあげられるくらいのようです。

日本酒、焼酎、味噌、醤油、味醂、米酢などさまざまな麹カビの食文化が息づいていますね。凄いこと、すばらしいことだと思います。